G20諸宗教フォーラム2019京都

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6月11~12日

6月11~12日

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G20諸宗教フォーラム2019京都 - 京都宣言

われわれ世界の諸宗教の指導者と宗教に関係する国際機関の代表者は、2019年6月11日から12日まで、日本の美しい古都である京都に集って、G20諸宗教フォーラム2019を開催し、現代社会が直面する様々な問題に対処するため、宗教的・文化的背景の違いを超えて真剣に話し合った。何故なら、このフォーラムが閉幕してわずか2週間後に、世界の主要国がその国益をぶつけ合うG20首脳会議が大阪で開催されるからである。そのまま看過すれば、利益の極大化のみを目的とする経済的論理によって支配されてしまうであろうG20サミットの議論を少しでも修正するために、われわれ宗教者は、全地球的観点から、生きとし生けるあらゆるいのちを尊重する立場に立って、以下の8つのテーマを中心に議論を重ねた。


8つのテーマとはすなわち;

「グローバルコンパクト」の概念を社会一般に当てはめて、その中で宗教の役割を考えて、利益尊重の見方とは違う宗教独自の全人類的視野から掲げられたゴールを達成する架け橋となる。

『京都プロトコール』が制定されて22年、地球温暖化は悪化の一途を辿っている。そのため気温上昇を1.5℃に抑えるという「パリ協定」より積極的な京都市の取り組みを支持し、世界的なカーボンプライシングの検討を求める。

国家や大企業による一元的な個人情報管理から非倫理的な自律型ロボット兵器の実戦配備に至るまで宗教者として懸念を示し、ディープラーニングによって人間を凌駕するようになったAIの適切な管理責任を求める。

全人類的目標であるSDGs達成においてコミュニティーレジリエンスを高めることが重要である。そのためには行政によるインフラの整備に加えて、宗教者の積極的関与によるソーシャルキャピタルの醸成が不可欠である。

生命科学の飛躍的な発展は人々に大きな希望を与えた一方で、「いのちの選択」など新たに発生した問題について話し合うと共に、「いのち」を処分可能な所有物と考える見方に警鐘を鳴らした。

今なお、世界の各地で政治的・民族的・宗教的に抑圧された大勢の人々の現状を見逃さずに、世界人権宣言の精神に基づき、G20諸宗教フォーラムに集った宗教者は、世界の分断を超克し、共に生きる社会の構築に取り組むこととした。

先進国共通の「少子高齢化問題」を解決させるためには、安心安全な環境を整え、出産や育児を望む人と長寿を祝福すると共に、異なった世代間が相互に尊重し合える社会にする。

格差と貧困を生じさせている社会構造を批判し、利他・支え合いという共通価値を創出していくことの重要性を確認した。実践的には、教育によるエンパワーメントに加えて、社会の様々なセクターの連携による社会的包摂を宗教者が推進していくこととした。


宗教者から寄せられた全人類的問題であるこれらの8つの課題について、G20サミットに集う世界の主要国の指導者が、単に自国の利益を尊重するだけでなく、地球全体を俯瞰する視座から、70億を超す全人類の幸福と、生きとし生けるあらゆる生命がその「いのち」を謳歌することができる世界を建設して行けるように、その指導力を正しく発揮することを望むものである。

最終兵器たる核兵器の開発は、核不拡散条約など核軍縮の努力にも関わらず、特に現在東アジアにおいては弾道ミサイルと共に地域の安全保障にとり大きな脅威になっていることに注意を喚起したい。唯一の戦争被爆国日本において開催されるG20の首脳会議では、核兵器及び弾道ミサイルの廃絶へ向けて明確な意思を示すことを強く望む。

今日、多くの国々において、グローバリズムの弊害を強調する余り、国益第一主義の傾向が顕著に見られる。その行き着く先は国家間の対立と衝突である。G20の首脳は、寛容と相互尊重の立場に立って、行き過ぎたユニラテラリズムに走らないよう協調路線を取ることを望む。

基本的人権の尊重は国連憲章に規定された規範である。しかし現在においてもなお、世界の多くの国々において、基本的人権が蹂躙されている事実は悲しむべきことである。G20諸国は基本的人権の保護と尊重の手本となるべく、リーダーシップを取ることを望む。


2019年6月12日
G20諸宗教フォーラム2019京都に集う宗教指導者一同